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開発者インタビュー第4回 UFOキャッチャー(後編)

猫耳のようなヘアバンドを頭に着けた少年が首をかしげて目の前のUFOキャッチャーをのぞき込んでいる。UFOキャッチャーの中には数個のカプセルが転がっていて、そのひとつに狙いをさだめながらクレーンを自在に操っているようだ。驚いたことに手を使わずにクレーンを操作している。

Beaver’s Hiveロボット開発チームに直撃取材するシリーズ第4回。新しい入力方式のUFOキャッチャーをひとりで作り上げた開発担当者にお話を聴く。(前回からの続き)

図1 頭の角度でクレーンを動かせ!

筆者: 開発にあたって苦労はありましたか?

開発担当: えーと、けっこう何ヶ所かあって……。

筆者: そんなにあるんだ。

開発担当: もともと既製品のUFOキャッチャーからはぎ取ってきた部品なのでまず分解するんですけど、もとからある配線をなるべく使おうと思ってそのコネクターを調べて買うというちょっと無駄な作業しちゃったんです。

筆者: あー、コネクターっていろんなサイズや規格がたくさんありますからね。

開発担当: 結局(同じコネクター部品が)見つかったからいいんですけど、そのコネクターもろもろ買ったらこのUFOキャッチャーキットより高かったんです(笑)

筆者: あはは。

開発担当: それがひとつ目の苦労です。あとふたつあるんですが、ひとつがアーム以外の他の部分って全部モーターの(回転)軸で動いているような感じなんですね。

筆者: はい。

図2 アーム開閉機構

開発担当: このアームの部分だけワイヤーで動くんですよ。 縦のZ軸(上下移動)とこのアームの部分をワイヤー巻き取りでやるんで、ワイヤーがすぐボビン(糸巻き)から外れたりとかして、(映像を観ながら)今もこれ全然下がりきってないし、下がったときに下がったきり上がりきらないんですよ。

筆者: あー。

開発担当: そういうところがけっこう難しかったですね。

筆者: アームの部分が下がったり上がったりするのはウインチみたいな機構になってるのですね。

開発担当: そうです。

筆者: なるほど。プレイヤーが思った位置までアームが降りてこなかったりするわけだ……。

開発担当: そうそう。降りるというか「落ちる」。落下しきってそこから上がらないみたいなのがよくあって、けっこう本番でもそれが多かったかな。

筆者: でもその部分はキットというか完成品では?

開発担当: もとは完成品なんですけど、もうバラバラにした状態だったのとワイヤーもほどけて緩んでる状態だったんで、そこから動かすとボビンのワイヤー巻いてるところからワイヤーが外れてしまうような感じになっちゃってて。

筆者: あー。

開発担当: 自分でまた巻き直しとかもしたんですけど、もうワイヤー自身が伸びきってるような状態になっていて……。

筆者: なかなか大変。

開発担当: そこがけっこう大変でしたね。

筆者: そういうハードウェア面で苦労したんですね。

開発担当: そうです。さすがにここを自分で作り直すわけにはいかなかったんで。なんとか使おうと思ったときにかなりここを苦労しました。

筆者: それだけにメンテナンスは欠かせませんね。

開発担当: Beaver’s Hiveの作業部屋でうまくいったとしても、結局持ち運ぶ時にまた(部品を)外さなくてはいけなくて現地でまた調整するみたいなのがあって、そこもすごい苦労しましたね。

筆者: 確かに見せる前にちゃんと動かさないといけない。

開発担当: そうです。

***

筆者: ところでM5Stack(マイコン)を使っているということだったんですけれども、パソコンがM5Stackと通信をしているのですか?

開発担当: えーと今回出場したTechSeeker HACKATHON 2024にはソニーのSPRESENSE(スプレッセンス)の協賛もあって、SPRESENSEマイコンボードの貸し出しもあったんです。

筆者: 低消費電力マイコンですね。

開発担当: そのSPRESENSEを使ってBluetooth(無線通信)経由で通信するんですけど、SPRESENSE自体にはBluetoothが付いてないのでM5Stack同士でBluetooth通信してそこから(SPRESENSEへ)シリアル通信で送っています。SPRESENSEは本体を動かすリレー回路の接点を駆動させるとかに使いました。

筆者: アームを前後左右に移動させるモーター、上下させるウインチ用モーター、あとツメ開閉用モーターを制御するのにSPRESENSEマイコンを活用したんだ。

開発担当: そうです。SPRESENSEを使うってところでもう一個カメラとかにも使いたかったんですけど、実は使うのをやめてしまったこともありました。

筆者: なんとカメラ映像をマイコンで処理しようした!?

開発担当: あんまりfps(動画処理速度、1秒あたりのコマ数)が出なかったんで……。

筆者: マイコンはSPRESENSEとM5Stackのふたつを使っていて、PCからBluetooth無線通信でM5Stackに指令を送って、M5StackからSPRESENSEへは有線シリアル通信でつながっている。

開発担当: そうです。

図3 UFOキャッチャーに搭載されたパソコン

筆者: パソコンは何をしてるんですか?

開発担当: パソコンはただ表示してるだけなんですよ。

筆者: ああ、液晶モニターの代わりというか、その表示装置ですか。

開発担当: えーと(パソコン画面には)プログラムはこんなんですよとか、今どっち方向に動いてますよとか、デバッグ的な使い方も兼ねて表示していて横で見てる人にもちゃんと指令通り動いていてるんだとわかるようにしてます。

筆者: アームの動きを、スチールラックに載っているパソコンでモニターできるように?

開発担当: そうです。アームがちゃんと動いているね、指令通り動いているねっていうのを僕自身が見るっていうのもあるんですけど。

筆者: 動かしながらデバッグしやすいようにということですね。

開発担当: はい。本番のときもちゃんと動いてるかを確認するために一緒に(情報を)表示してるっていう感じですね。

***

筆者: 審査はどうでしたか?

開発担当: 審査員の方もUFOキャッチャーをプレイされてましたし、これも作れるんやすごいですねという感想はもらいました。

筆者: この映像(リンク[1])だと少年が楽しそうにUFOキャッチャーで遊んでくれてるんですけど、当日このハッカソンの展示物は一般の方も遊べるように開放されたんですか?

開発担当: そうです。UFOキャッチャーにガチャガチャのカプセルを入れてるんですけど、その中にビーバー君のオリジナルキーホルダーを入れていて、UFOキャッチャーで取れたらあげるみたいなことをしてました。

筆者: 遊んでくれた方にキーホルダーをプレゼントしてたんだ!

図4 ビーバー君オリジナルキーホルダー

開発担当: キーホルダーは全部履けましたよ、40個くらい。

筆者: えええ!? じゃあ入れ替わり立ち替わりお客さんが来てくれたんだ。

開発担当: はい。2日間でキーホルダー全部履けました。

筆者: おおー、それは大人気。もう大成功じゃないですか。

開発担当: 出し物としてはちゃんと成功したなっていうのはありますね。

筆者: 今日はお時間をいただきありがとうございました。

開発担当: こちらこそありがとうございました。

🦫

次回予告

次回はPC用アセンブラで作られたパズルゲームの作者にお話を聴きます。お楽しみに!

リンク(動画)
[1] Beaver’s Hive、頭の傾きで操作できるUFOキャッチャー作ってみた、URL https://youtube.com/shorts/9sORvFnI8Ok?si=q5YJ1rh2uhLXTPdl


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